コラム・特集

投資用住居系不動産の建物消費税取扱いが大きく変わりました。

(2020年10月より)

住居系不動産の建物消費税の控除・還付が受けられなくなった

2020年10月からの消費税法改正により、投資用マンションなどの住居系の建物(正式には、「居住用賃貸建物」といいます)を購入した時に支払った消費税の取扱いが変更となりました。改正前は、居住用賃貸建物を購入した時に支払った建物消費税でも、購入した年の確定申告で消費税の納税額から控除したり、また、控除した結果納税額を超える場合には還付を受けることができましたが、今回の改正により建物を購入した年の消費税の確定申告では、これらの控除や還付が認められなくなりました。

一方で控除・還付が受けられるケースがある

では、居住用賃貸建物の購入時の建物消費税は、控除や還付を通じて回収できる見込みが全くないのでしょうか。実は、全く回収の道が閉ざされた訳ではありません。期限があるのですが、購入した居住用賃貸建物を短期間で売却したり、事業用で賃貸して賃料収入が発生したケースでは、購入時の居住用賃貸建物の消費税の一部を追加で控除や還付をすることができます。

第1章 改正内容の概要

最初に、2020年10月から新たに導入された『居住用賃貸建物に対する仕入税額控除の制限』の制度のアウトラインについて、説明していきます。
■ 改正の対象者
今回の改正の対象者は、基本的には消費税の納税義務がある法人や個人ですが、その中で「一般課税」という原則的な方法で消費税の計算をしている法人や個人が対象となります。なお、同じ消費税の納税義務がある法人や個人でも、税務署に届出をして「簡易課税」という簡便的な方法で消費税を計算している場合には、今回の改正の対象にはなりません。また、そもそも消費税の納税義務がない場合も、今回の改正の対象外です。

改正のポイント

【ポイント】
①居住用賃貸建物を購入した時の建物消費税の控除や還付に制限が設けられた。購入した年の確定申告では、控除や還付が受けられなくなった
②一方で、購入した年から数えて3年の間に、控除や還付が受けられなかった建物消費税を取り戻せるケースがある
③控除や還付される金額は、「課税譲渡等割合」や「課税賃貸割合」という新しい方法で計算する
 第2章以降で、ポイントを詳しく解説していきます。

第2章 【ポイント①】居住用賃貸建物の建物消費税の控除・還付に制限が設けられた

■ 店舗などを兼用する賃貸住宅建物も改正の対象
今回の改正の対象となる建物は住居系の建物と説明しましたが、正確には「居住用賃貸建物」が対象とされます。なお、対象範囲は我々がイメージしているものよりもずっと広く、例えば、次の物件も「居住用賃貸建物」に該当します。
・住居部分が一部併設されている店舗や事務所施設 ➡メインが店舗や事務所用途の賃貸建物でも、住居用途の区画が一区画でも含まれていれば、建物全体が「居住用賃貸建物」となります。
・入居者に応じて居住用でも事業用にでも使える建物 ➡事務所での賃貸を想定している居住用のワンルームマンションであっても、住宅として賃貸する可能性がある場合は「居住用賃貸建物」として取り扱います。
ただ、「居住用賃貸建物」に該当しても、例外的に対象外となったり、兼用賃貸住宅建物のように「面積按分」を用いることで「居住用賃貸建物」に該当する部分を限定することができます。
■ 少額(1,000万円未満)の「居住用賃貸建物」は改正の対象外になる
■ 店舗などとの兼用賃貸住宅は「面積按分」により「居住用賃貸建物」部分を限定することができる
■ 兼用賃貸住宅の「面積按分」は、義務ではない(やらなくてもいい)

第3章 【ポイント②】控除・還付が受けられなかった建物消費税を取り戻せるケースがある

購入時に控除や還付が受けられなくなった居住用賃貸建物の建物消費税ですが、その一部について購入した年の翌年以降の確定申告で控除や還付の対象となります(ケースが2つあります)。

(ケース1)3年以内に購入した居住用賃貸建物を売却する


1つ目ですが、購入した居住用賃貸建物を売却するケースです。この場合、売却した年の消費税の確定申告で、購入した時の建物消費税の一部について控除や還付を追加で受けることになります。(今までよりも、控除・還付のタイミングは遅れます。)ここの大きな注意点は、居住用賃貸建物の売却時期に制約がある点です。建物を購入した年から数えて3年目の末日(注)までに売却する必要があります。
■ 売却までの「3年目」は、建物を購入してからちょうど3年間ではない
「居住用賃貸建物を購入した年から数えて3年目の末日」が期限であって、購入してから3年間ではありません。注意が必要です。

(ケース2)購入してから3年の間で店舗など住宅以外の賃料収入が発生している

2つ目ですが、購入した年から3年目まで(注)の賃料収入を確認します。3年目までの運用実績で消費税の課税対象となる事務所賃料や店舗賃料などが含まれていたら、購入した年から数えて3年目の消費税確定申告で、購入した時の建物消費税の一部について控除や還付を追加で受けることになります。

第4章 【ポイント③】 控除や還付金額の計算にあたり、「課税譲渡等割合」や「課税賃貸割合」を使う

次に、控除や還付される金額の計算方法について説明をしていきたいと思います。
■ 購入した年から3年以内に売却するケースでは、「課税譲渡等割合」を使う
「課税譲渡等割合」は、居住用賃貸建物を購入した年から数えて3年以内に売却することで建物消費税を取り戻せるケースで使います。具体的には、購入時に支払った建物消費税に「課税譲渡等割合」を掛けて控除や還付を受ける金額を計算します。
■ 購入してから3年以内に住宅以外の賃料が発生した場合は「課税賃貸割合」を使う
「課税賃貸割合」は、居住用賃貸建物を購入した年から数えて3年以内の間に住宅以外の用途で賃貸した時に使います。具体的には、購入時に支払った建物消費税に「課税賃貸割合」を掛けて控除や還付を受ける金額を計算します。

最後に

以上、今回の改正は今後の居住用賃貸建物の運用プランに大きな影響を与えると思われますが、物件購入検討時の運用方針や採算性の検討、また、運用期間中の収支計算の精度向上に向け、本HPをご参考頂ければ幸いです。

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